でも,この不安定な世界で,私たちが生きることを求められているのは,ある意味,神から与えられた試練であるかもしれない。
新設されたサイバー空間安全保障担当のリチャード・クラーク氏は,政府が使用する安全性の高いネットワーク「ガブネット」に関して,コンピューター企業に協力を要請した。ガブネットはインターネットから分離し,ハッカーやテロリストの進入を防ぐ方針だ。
絶対にハッキングされないコンピューターをつくるには,マシンをスタンドアローンにするしかない。繋がっているということは,誰にでも間口を開けることであり,侵入してくるものをセレクトするのは難しい。結局,開けるか,閉めるか,のどちらかを選択するしかない。利便性を考えたら,開け放って,あとの対処を考えることになるのだが,テロのトラウマを抱えた米国には,そんな余裕はないだろう。
ワイヤードの無防備さは,誰もが気付いている。たったひとりの人間でも,巧妙にDos攻撃を仕掛ければ,世界中のトラフィックを混乱させることができるし,ニムダのようなウイルスで混迷に突き落とすことだって可能だ。それに乗せて,政治的なテロを企てる者が現れたっておかしくない。いや,そういう人間がまだ現れないのが,不思議なくらいだ。この,よくよく考えればとっても不安定な世界で,私たちは生きようとしている。そして,未来を感じている。そんな未来など,あるかどうかわからない,試練に耐えなければいけない想いを感じながら。
|